マスボクシング探訪④ 日本連盟 全日本マス普及委員長 矢代義光さん編(矢代BFC・東京都荒川区)

マスボクシングが“生涯スポーツ”として根づくために

マスボクシングが「生涯スポーツ」として成立するために、何が必要なのか。その答えを、現場と制度の両面から見つめ続けてこられた方がいます。

日本ボクシング連盟 マスボクシング普及委員会 委員長 矢代義光さん

今回は、日本ボクシング連盟 マスボクシング普及委員長を務めておられる 矢代義光さん にお話を伺いました。矢代さんは、矢代ボクシングフィットネスクラブの会長としても、長年にわたりジム運営の最前線に立ち続けておられます。同クラブは500名以上の会員数を誇る、国内有数のボクシングフィットネスクラブです。

しかし、この規模や高い継続率は、単なる運営ノウハウの成果ではありません。
根底にあるのは、会員さん一人ひとりの目標に真剣に寄り添い、本気でボクシングを伝えるという、揺るぎない方針です。ジムを支えるスタッフ陣も、全員が「自分はチーフトレーナーである」という意識で会員さんと向き合っており、その姿勢からは、現場全体に共有された高い志が強く感じられました。

目次

「人物の魅力」が人を動かす

矢代さんは、プロの世界においても確かな結果を残された元日本チャンピオン(注1)・世界ランカーです。

現役時代、1試合で700枚以上ものチケットを自ら捌いていた、特筆すべき選手でもありました。これは一時的な成果ではなく、日頃から築いてきた人間関係と信頼の積み重ねによって実現したものといえます。

人が自然と集まり、支え合い、輪が広がっていく。その原動力となったのは、矢代さんご本人の人物的魅力と、長年にわたり培われてきた信頼にほかなりません。

注1:矢代 義光(やしろ よしみつ)|第42代日本スーパーフェザー級王者|帝拳ジム所属|プロ戦績:24戦 21勝 12KO 1敗 2分

長く取り組めることを前提とした競技設計

多くの一般会員さんが直面する課題は、真剣に取り組む手前で離れてしまうことです。

この点について矢代さんは、
「会員さんが感じる “楽しい” のラインを、一段階超えていただくことが重要」と語られています。

  • ボクシングジムに入門する
  • 自分なりの目標をつかむ
  • ボクシングを身近に感じ、競技へのリスペクトが生まれる
  • 当事者としてボクシングに向き合えるようになる

こうした段階を、無理なく自然に踏めることが、継続の鍵となるようです。

6階は、パーソナルレッスンにも対応、スタイリッシュな空間です

また、ジム運営の観点から見ても、サンドバッグの数には物理的な限りがあります。
その中で、必ずしもサンドバッグに依存せず、真剣にボクシングへ取り組める競技としても、矢代さんはマスボクシングを高く評価されています。

野球であれば、キャッチボールは誰でも行えます。

一方、ボクシングではスパーリングを気軽に行うことはできません。
だからこそ、マスボクシングが存在します。

  • 実戦に近い緊張感
  • 高い安全性
  • 明確で現実的な目標設定

この「届く目標」が会員さんの中に真剣さを芽生えさせ、それをスタッフが支える構造が、長期的な継続を可能にしています。

技術の核心は「打撃そのもの」ではない

矢代さんは、現役時代に師から次のような教えを受けたと語られています。

「打つことばかり考えるな。どうすればパンチをもらわないか、打たれない位置に頭を動かすことを考えろ」

技術の核心は、単に拳を当てることではありません。距離、角度、タイミング、そして相手の攻撃に応じた重心移動や頭の位置――それらが有機的に噛み合った結果として、はじめて“打撃”は成立します。
この言葉は、相手の動きに反応しながら主導権を握る、マスボクシングの本質を端的に表しているのではないでしょうか。

インタビューでは終始、真摯にご対応くださいました

さらに矢代さんは、
「負けた理由が分からないマスボクサーの多くは、攻撃に意識が集中し、ディフェンスへの思考が欠けています」とも指摘しています。

マスボクシング上達のためのポイント

打たれない位置や技術を理解すること。

競技性が年々高まっている現在のマスボクシングにおいて、勝負の核心は、攻防の中で忘れられがちな「防御への理解と対応」にある ―― その言葉は非常に示唆に富むものでした。そして、それを安全性の高いマスボクシングの中で体得できる点こそ、この競技が持つ大きな価値の一つでもあります。

矢代BFC内では、フリースクールも開講されています

判定の信頼性を支える、日本ボクシング連盟の取り組み

マスボクシングが競技として成立し、誰もが安心して挑戦できる環境を維持するためには、判定の公正性と納得感が欠かせません。そのため日本ボクシング連盟では、大会期間中、審判団が日々ミーティングを重ね、採点基準の統一と精度向上に真剣に取り組んでいます。

  • グループLINEを活用した判定基準の共有
  • 「この日の何試合目の判定には議論の余地がある」といった具体的な検証
  • 翌日の判定へ即座に反映するための調整

矢代さんは、マスボクシング普及委員長という立場から、こうした現場の取り組みを間近で見続けてこられました。審判団の間で共有されている「クオリティブローを考えましょう」という真剣な意思統一が、競技性の向上を力強く支えていると語られています。

*元日本チャンピオン・世界ランカーであり、現在マスボクシング普及委員長を務める矢代義光さんと、日本マスボクシング研究会 監修の比護 忍が、2ラウンドのマスボクシングで拳を交えました。矢代さんの高度な技術と競技に向き合う姿勢が印象的な、とても学びの多い時間となりました。

引退後も、ボクシングは続く

矢代さんのご尽力により、元世界チャンピオンの方々もマスボクシングにご協力くださり(注2)、そのやりがいや価値を実際に体感されたうえで、言葉として発信してくださいました。矢代さんご自身も、次のように語られています。

現役引退後も、マスボクシングならではの適度な緊張感と真剣勝負を味わうことができる(体感価値)

競技としてのボクシングに向き合う姿勢を、年齢や立場を超えて保ち続けることができる(精神的価値)

競技人生の延長線上に、マスボクシングという新たな挑戦の舞台が用意されている(時間軸の価値)

実戦ボクシングを楽しみ、引退後も生涯スポーツとして続けられる。マスボクシングは、その答えとしても存在しています。

注2:2025年11月29日(土)の全日本選手権・準決勝終了後、2025年度全日本マスボクシング選手権優勝者と、プロボクシング元世界王者との5対5の特別対抗戦が実施されました。矢代委員長のご尽力により実現した企画です。

矢代普及委員長からのメッセージ

マスボクシング普及の先にあるもの

マスボクシング普及活動は、単に競技人口を増やすことだけを目的としたものではありません。

多くの方々にボクシングへチャレンジしていただき、その中で多くのマスボクサーが安心して挑戦し、輝くことのできる場所、心から楽しめる場所をつくるため、数多くのイベントを企画していく。

そして将来的には、マスボクシングが世界大会へと発展することを目指している。
それが、矢代さんからの力強いメッセージでした。

矢代義光さん(右)と日本マスボクシング研究会 監修の比護忍
矢代義光さんより、マスボクサーの皆さまへ

企画・取材:日本マスボクシング研究会

編集協力:Team Ringside Tokyo

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